沢木耕太郎のバーボンストリート
東京で生活していても、場所の名前は知っていても行った事が無かったり、どんなところかわからない場所って言うのは沢山ある。多分、東京住んでても浅草行った事ない人も多いと思う。
名所回って、見た事の無いものを、ふらりふらりと見て回りながら、当地の美味い店に入る。。。これ、なかなか面白いもの。ちょっとお洒落なバーに入ったりして。。。
そういえばバーと書いていて思い出したが、沢木耕太郎の著作である、バーボンストリートという本を読んだ。
ある時はひと気のない深夜のバーの片隅で、またある日は人いきれのする賑やかな飲み屋で、グラス片手に飲み仲間と語り合った話の数々―スポーツ新聞の文章作法、ハードボイルド、テレビと映画、賭け事にジョークetc…。
こんな話を15のエッセイに仕立てた本なわけだが、これがなかなか。
お洒落というか、読みやすいというか。。俺は、一番よく飲む酒が、バーボンのジャックダニエル(まぁ一番飲むのはビールだが、銘柄決まってないので)だから、ちょっと魅かれ、読んでみたら・・・。うーむなかなか。
まぁ実際に読んでもらえば内容がよくわかるだろうが、ちょっと興味深い一節があったので紹介しておく。とある、マラソンランナーの話で。。。マラソンランナーは走っている時何を考えながら走っているかについて話している。
とあるレースで優勝したマラソンランナーは、沿道に沢山の観客がいたにもかかわらず、まったく気づかなかったと語った。では、風景が見えたとき、人はもう勝つことができなくなるのか。
ある時友人にこの話をすると、それはマラソンのことだけではなさそうだなと呟いた。
誰でも、何をしていても、最初は一心不乱に前に進もうとする。しかし、やがでその行為に慣れてくると、周囲の状況が眼に入ってくる。それと共に前へ進むスピードが鈍るようになる。だが、と友人は付け加えた。
ひとたび周りが見えてくれば、確かに早く走れなくなるだろう。
だからといって、いつまでも一心不乱に走っていれば良いとは思えない。例えばインドの村に、悟りを開こうと一心不乱に念じ続けている坊主がいるとする。ふと我に返ると、頭の上に美しい花が一輪乗っている。
それに気がつきみ仏の仕業と有頂天になるよりは、それが単なる村の子供のいたずらであることがわかっていたほうが良いではないか。
悟りはその花のもっと先にあるはずだから。大事なことは、風景が眼に入らないことではなく、はいるようになったあとで、もう一度集中できるようになることではないか。
「だって、ただ最初の一心不乱だけでいけるところなんて高が知れてるじゃないか」
およそスポーツに縁が遠そうな友人の弁なので、いちおう軽く反論してみた。
「しかし、スポーツと言うのはその一心不乱が世界を制することがあるのさ。」
そういうと、友人はだからスポーツはくだらないのだとでも言うように顔をしかめた。だが、大事なことは風景が見えてきたらどうするかと言うことだという、友人の言葉にはあらゆる世界に通じる普遍性があるように思われる。
何かに向かって懸命に走っていた人が、ある日、不意に周囲の風景に目が行くようになり、見る見るスピードが鈍ってくる。
私もそのようなスポーツマンや芸人を何人となくみてきた。鈍るだけでなく、ついには立ち止まってしまう人もいた。
確かに、スピードを緩めると、周囲のすべてが美しく、懐かしく見えることがある。
耳元を通り過ぎる風の音が聞こえ、色までが見えてくる。しかし、その色を見ることは、走ることにとってもけっして無駄ではないはずなのだ。問題は、ひとたび風を見た人が、どうしたら再び走れるようになるかということだ。
これはなかなか考えさせられる。文中にも記述があるが、まさにあらゆる世界に通じる普遍性がある。風を見る。時には心地よく離れがたいものでもある。
サラリーマンも同じく、一度立ち止まれば、再び走り出すことは難しい。
目先のお金や日々の生活に追われて、一心不乱に走ることを忘れると、小さい頃に抱いていた夢や希望は二度と手に入らなくなり、人の青春は終わってしまうのである。
そんな人生、私は価値を見出すことが出来ない。
以上
大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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