企業分析〜総合商社〜

2018年1月20日資産運用

就職活動の人気企業上位に常にランクインしている総合商社だが、株価は常に冴えない。

従業員に高い給料を支払い、福利厚生等も申し分ない企業ばかりで、直近の収益も3000ー5000億円の規模となっており、投資する先としては検討したい企業群であろう。

しかし、株価が冴えないのはなぜか。

私が思うに、第一にコングロマリットディスカウントが挙げられよう。金属、機械、化学品、IT、エネルギー、生活分野、など幅広く事業を手がけているが、これらの事業間のシナジーは乏しい。

冷静に考えてみれば、新日鉄とファミリーマートの間にシナジーを見つけようとしても、相当限定的だろう。経理分野ですら、会計基準の違いや、経理処理の違いに加え、業界の商慣習も違う上、展開する国も異なる為、シナジーは乏しい。

第二に、資源偏重による大幅な減損リスクが挙げられる。いきなり利益が大幅にマイナスになります、株価が暴落するかもしれません、というのは投資家の守るべき原則である、損をしないというのに反する故に、魅力的な投資先ではなくなる。

それでは、総合商社がどうなっていけば魅力的な投資対象になりうるだろうか。

利益、効率重視、という経営に走るならば、高給取りの社員を大幅にリストラして、最低限の株を管理しながらめぼしい会社に投資する投資会社になっていくべきであろう。

一方、総合商社は国家の経済を支える基盤であり、日本の経済を発展させていく存在なので、利益率の低さに目をつぶり、投資家の利益希望水準も低めに保つ、というなら今の形態のままで事業拡大すべきだろう。

どちらのパターンにせよ、総合商社の国内、海外拠点はこれからなくなっていくだろう。というのも、世界中がインターネットで繋がる時代、テレビ会議を簡単にできる時代に、拠点を構える意義が薄れているからだ。

よって、海外拠点、国内拠点の統廃合をいち早く進めていく企業には注目したい。

また、株主還元姿勢を打ち出している会社も、短期的にはメリットが大きい為、注目したい。

それらを総合的に勘案すると、三井物産は魅力的な投資先であろう。特に、最近の利益水準は半端ではない上、資源で沸騰した利益と穀物会社の買収等によって発生した減損をぶつけて見えなくする、という形もとっており、見栄えが良い。

丸紅はガビロンの減損がどこまで行くかわからない上、巨額の損失を計上しているガビロンの投資を決めた社長が居座り、積極的に案件を具申し、実行した役員が粛清されつつ、社長は会長として会社に残り続けるという体質からも、先はくらいであろう。

三菱商事はリスク管理を徹底させており、資産や利益水準も最高クラスにあるものの、非常に手堅く事業経営しているため、中長期的な視野で投資すべきだろう。

伊藤忠は流石近江商人の血を引いているゆえに、いけいけドンドンで攻めているが、バブルの時代にもイケイケでどんどんで儲けた結果、大損をこいてバブルの処理に長い時間を必要とした過去がある為、あまり信用できない。

特に、中国のCITICとの持ち合いにより、財務諸表の連結をしたは良いものの、中国のカントリーリスクが大きすぎる為、要注意先だと感じる。

住友商事はバナナ次第だろう。

こういった具合なので、おススメは三菱商事か三井物産である。

ここ1年の短期という意味では三井物産が最有力である。

以上


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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