染み入る雨は人生の音
今日は久しぶりに雨が降った。都心から毎日富士山の姿が見える程に空が澄んでいる日が続き、空気も乾ききっていた。
思えば、この1年、プロジェクトに明け暮れ、投資に全力投球してあっという間に日々が過ぎていった。澄み切った空がいつもそこにあり、穏やかで快適な環境が知らず知らずと当たり前になっていった。
プロジェクトが破綻し、そしてまた、投資に敗れ、これ以上力を注ぐことが出来なくなったとき。当たり前の澄んだ空から、地面に染み入るような雨粒が注いだとき、我に返って冬の空気の冷たさを感じた。
ひと時、日々の仕事や人間関係など、何ら価値を見出さない日々が続いた。これまでの関係を振り返る必要も、何かを進めるために人間関係をメンテナンスする必要もなかった。
走り続ければこそ、人はついてきて、価値を生み出せばこそ、新たな価値が溢れてくる。そんな感覚を以って走ればよかった。そんな中、歯車の回転が止まり、ふと立ち止まざるを得なくなり、自分が今どこにいるのか、居場所を確認せざるを得なくなった。
自分の居場所。それは、組織に属したり、何かの柵にとらわれつつも、築き上げてきた場所。そこに居れば、一定の心の安らぎを得て、社会の一員としてある自分を感じられる。
一方で、誰かが築いてきた場所の一つに過ぎない所に留まる自分が恐ろしく、価値観を書き換えられるような感覚にとらわれる場所だとも感じる。
そこに自分が見出すべき価値があるのか。そう自問自答すると、心が叫ぶ。自分はそんなものは求めていない。安寧の生活の中に生き、人より少し良い暮らしを求めて人生を燃やし尽くす生き方をすべきではないと。
今日、若者に会い、若者はまだ見ぬ未来への不安を語った。その未来は自分が見た過去であり、全て予測できる過去だった。
日を同じくして、会社の有力者と話した。今の私の状況を伝えるに、そんなことに時間を費やしているのは本末転倒という顔をしながら、憐れみの視線を投げかけてきた。
年功序列が崩れていく中で、みな生き抜くために必死になっている。信じがたい人事が横行する中で、会社に属し続ける事は、コントロール出来ない将来を会社に託してしまうというリスクを抱えることになると感じてきた。
故に一人で生きていく力を身に着けたいと願ってきたが、一方でどこか会社で大成したならば何者になれるのかと問う自分がいる。
幾ら高い給料を貰っても、どんなに生活が快適でも、この不安感や、将来に対する欠乏感はぬぐえない。狭い世界の価値観にとらわれていると、会社の人の視線を一蹴する事が出来る日々も送りつつ、不安もぬぐえない日々がある。
自らの足で歩む。その道を開こう。いばらの道を求めて歩もう。生きている限り、誰かのために生きることになる。ならば、自らの能力を活かしきる場所を探して、ためらわずに力を発揮していこう。
空から音もたてずに落ちてきては、地面に泣くように染み入る雨。その音を聞きながら、夜道を走る車の音を聞きながら、未来に誓う次第である。
以上
大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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