星降る峡谷〜中国、雲南省の旅〜

標高4292メートル。太陽は近く、空気は薄い。道は凍り、風が吹き荒ぶ。

とある年の12月、中国雲南省香格里拉県にある、真のシャングリラ(桃源郷)と言われる場所を目指し、旅していた。

合計で4つの都市を訪れ、少数民族やバックパッカーなどと飲み明かした。計24時間ほどバスに乗り、悪路を揺られながら一路桃源郷へと向かった。

山壁をくり抜いた道を、バスは走り続けた。所々落石が起こり、行く手を塞ぐ。断崖絶壁とはまさにこの事。

落ちれば確実に命を失うその道を、凍り付いて時に滑るその道を、何事も無かったかのように車は走り続けた。

途中さらに危険な峡谷へと入る際、関所のような建物があり、どのような危険が起こっても一切は自己責任との一筆を認め、大峡谷へと入っていった。眼下には濁流が流れ、道は更に狭小を極めた。

バスを降りて後民家で一泊し、更に馬で1日かけて山を超える。日陰になり凍り付いた道は馬も滑り、何度も落馬しそうになる。途中からは、馬も疲労の限界を超え、徒歩にて山を越えた。

そしてたどり着いた桃源郷。6000メートルを超える雪山から流れ出る水は、氷のごとく冷たく透き通る。周囲を囲む山の緑は深く、空は限りなく青い。ロバが歩き、あらゆる動物が人間と共に暮らしていた。

夜には民宿にて宴会が開かれた。現地の人が振舞う料理は、産みたての鶏の卵と、採れたてのトマト。そして現地で育てた牛と鳥のスープ。

極寒の地で飲むスープは、体中に染み渡るほどに旨い。高度の高いこの場所で飲む酒は、いとも簡単に酔いを回らせる。

酔い覚ましに外に出た。無数の星辰空に輝き、それは正に星が降る光景だった。天の川が数え切れない星を抱き、煌々と夜空を照らし出していた。

静かな村に響くのは、牛の首につけた鈴の音色のみ。星に映えるチベット族の神聖な山が、星降る峡谷に静かに聳えていた。

翌日更に歩く事8時間、幾名もの方が命を落としたと言われる険道を数名で徒党を組んで歩き、崖を越えていった。

酸素は薄く、仲間は高山病に罹り吐いていた。道中、風の谷に出会った。天空の城を見た。切り立った崖に囲まれた場所に、緑豊かな天空の城を見た。

そして再び長時間のバスに揺られ、雲南の省都、昆明からフライトし上海へと戻った。

大学時代の4年間、毎晩人と酒を飲み、ノルウェー人と実家へ飛び、コスタリカ人と同じクラスで、アメリカ、ロシア、デンマーク人と同居して、ブラジル人と大喧嘩。イスラエル人と東京で寿司を食い、フランス人とホームパーティー、香港人&イタリア人と街に繰り出し。。。

皆が同一でない文化で育ち、バックグラウンドも多種多様。

文化の違いか、性格の違いか、大喧嘩する事もあれば大いに仲良くなる事もある。戦争を理由に、日本人は信じられないと告げられた事もある。白人の心に見え隠れする、アジア人に対する優越感も感じてきた。

外人に対して、ニコニコ笑って可愛ければ済むのは女の子だけ、男だったら最初だけ。女の子には放っておいても男が近づいてくるもの。

単なる表層の付き合いではなく、日本として敬意を受け、認められる為には笑顔だけでは済まされない。自分の考えを持ち、それに沿って行動し、自分に自信を持つ。

世界二位の経済大国でも、アジアの端にある島国であることに変わりは無い。

日本にある、どの国にも無い素晴らしい文化と同時に、日本人が未だ取り入れていない海外の先進的な考えに驚かされる毎日。

それは経済的には遅れている中国でも同じ事。それぞれの国には、それぞれの文化があり、良い部分もそうでない部分もある。

自分の考えを持って、その素晴らしい文化を吸収し、自分なりの世界を持つ。それでこそ初めて国際人になれるだろう。

今春4月より社会人として働く。その前に今一度世界中を旅する。

旅を通じて世界を見たい。

世界を見て、社会に旅立ちたい。

そう思いながら、社会人への道を歩んでいく次第である。

以上


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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