『マネジメント・バイブル』
ネスレ名誉会長が後任のCEOや役員陣、社員や経営に携わる・若しくは志す人々に自らの経営哲学を伝えるべく書いた本を読んだ。
著者名:ネスレ名誉会長 ヘルムート・マウハー 岸伸久訳
出版日:2009年4月
出版社:ファーストプレス
評価:★★★★☆
同氏は、理論やデータに基づき意思決定をする事、投資銀行やコンサルタントが作成した膨大な資料も役に立つが、最終的には、何が正しいか直観的に判断する事も重要と説く。これは換言するならば、自らの経験や知識の複合体を基に、あるべき将来像を描き、本質を考えて、たどり着くべき結論を導き出す事である。又、他者が生成する数多の情報や考え方にとらわれ、ぶれる事無く結論を出すという事であろう。
理論・形式でなく実践、こそが同氏の言わんとするところであり、ネスレに脈々と受け継がれる原則の一つなのである。(更に主観を入れて深読みすると、決断の結果がいずれに転ぼうとも、「サラリーマン的」に「○○の資料やアドバイスに基づき判断した」と逃げ回る事は経営者の姿ではない、と言っているとも感じられた。)
又、同氏の主なメッセージとして、システムでなく人の重視、チームによる統括でなく強いリーダーシップ、対立する価値観の間のどこに落とし所を見つけてバランスをとって経営に反映させるか、が記されている。
いずれも極めて示唆に富んだ内容であり、一従業員であろうとも、大小あれど意識しながら仕事に取り組む事で、より高い次元の目線を持って仕事に取り組めると感じた。
最後に文中に取り上げられた幾つかのポイントのうち、経営者の資質、マネージャーと経営者の違い、が極めて興味深かった為、これらを列記し、本書評の締めくくりとしたい。
経営者に必要な資質
1.勇気、大胆さ、落ち着き
2.学習能力、新しい事への敏感さ、将来起こりうることに対する想像力
3.内外へのコミュニケーション能力と人をやる気にさせる力
4.イノベーティブな環境を作りだす能力
5.大局的思考
6.信頼性(クレディビリティ)
7.変化を積極的に受け入れる態度とその変化に対応する能力
8.国際的な経験があるか、さもなければ、他国やその文化に対する理解
9.責任ある決断を迅速に下せる能力
10.「個性」や「人間性」という言葉に含まれるすべての要素(カリスマ性も含めて)
11.謙虚さ、同時に品の良さ
12.適度な繊細さ(繊細でなければ他者を導くことはできないが、繊細すぎても導けない)
経営者とマネージャーの違い
■マネージャー
・企業内の職務に力を注ぐ
・企業を管理し、その価値を最大化する
・専門的な知識や経験がある
・事業予測や計画を立てる (計画期間はどちらかというと短期)
・チェックリストや主要係数などを使ってリスクをコントロールする
・分析、目標、効果測定などを用いる
・プラスとマイナスを合理的に比較した上で意思決定を行う
・特定の経営的素質を持っている
■経営者
・新規事業の機会に何よりも目を向ける
・どちらかというと戦略的に行動し、会社を一からつくる
・カリスマ性が有り、情熱的である
・アイデアや将来へのビジョンがあり、長期的に考える
・リスクを取り、勇気がある
・単純なコンセプトや基本的なアイデアを粘り強く追い求め、それに従って行動する
・合理的な議論だけでは答えの出ない難しい問題に関しては、直観に基づいて意思決定を行う
・真のリーダーである

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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