水戸大家の廃業に思う事~不動産仲介業に求められる倫理観~
1か月も前になるだろうか、水戸大家さんが廃業すると発表した。
水戸大家は一棟もの投資をする人たちの間で知らない人はいらない不動産仲介会社であり、みねしま社長が発信するメールマガジンは15万人の読者数を誇るほどの人気である。
何故廃業したのか
廃業した理由は色々あるだろうが、水戸大家さんが拡大出来た理由を考えれば、廃業の理由もシンプルに見えてくる。
同社は要はスルガ銀行等の高金利銀行からの融資をつけて、サラリーマン大家に高額な地方物件などを売りつける事で成り立ってきた。更には1法人1物件による多法人スキーム、つまり個別法人の負債を銀行に隠しながら多額の借入を起こして一気に資産規模を膨らませるモデルで、大量に物件を売る手法を積極的に採用していた。
スルガ銀行が金融庁から刺され、金融機関が引き締めに入った中で、同社のスキームでは真面に物件を売る事が出来なくなる。売れないのに人員や固定費はいきなり切れない。更には、これまでに売った物件の仲介責任も発生してくる。
このような状況に鑑み、さっさと店じまいした、というのが真相だろう。
不動産仲介業者は売って終わりなのか
調子の良い時に、顧客が破滅する事も顧みずに、スルガスキームでバンバン物件を仲介し、一たび形成が悪くなると見るや否や店じまいする。自分さえよければいい、金さえ手に入れば良い、そんな姿勢が垣間見えて実に忌々しい。
不動産は数千万円、時には億単位の買い物となるが、売るだけ売って仲介手数料を取るビジネスというのは倫理的に許されるのだろうか。仮に物件に様々な瑕疵やマイナス点が出てきた際、買ったやつが悪い、と言って金だけ持って逃げ回るのはクズの所業ではないだろうか。
これは私が一貫して言い続けている事だが、金は命よりも重い。人が死ぬと、その家族や親せきが悲しみ、家族の生活が厳しくなる、といった事が起こるが、借金が引き起こす不幸は一族郎党を巻き込む。親戚だけでなく、時には友人までも不幸にする。また、子や孫の世代にまでその影響が波及する事も少なくない。
それ程に金は重い。
そんな重い金が動く不動産の仲介とは、高い倫理観が求められる職業であって、売って終わりでは済まされるべきではないだろう。
法律違反でなければ何をしても良いという姿勢がクズの証
では、水戸大家が違法行為をしていたかというと、それはわからない。間違いなくグレーな手法を多用していただろうが、完全に違法ではなかったかもしれない。
今回の廃業も、法律にのっとって廃業を選択しているだけであり、違法ではない。
だが、スルガスキームも、多法人スキームも、売り逃げの廃業も、どれを取っても倫理的には許されがたい行為としか言いようがない。同社から物件を買った人たちが、今後路頭に迷ったら、一体誰が責任を取るのか。
投資は自己責任と言いつつも、非常にリスクの高い物件を、よくわかっていないサラリーマンに売りつけ続けた挙句、蒸発する人達は許しがたい。
このような人達は、実は不動産業者に多々おり、会社が解散しても、また別法人を立ち上げてあくどい仲介をやる為、いたちごっこのような状況が続いている。
だが、このような状況を国は放置するべきでないだろう。なぜなら、国を支える最も重要な存在であるサラリーマンたちが、むやみに破滅していく事は、国の経済的・政治的安定が揺らぐことになりかねないからである。
リーマンショックの原因と今後の対策とは
2008年のリーマンショックは、返済能力のない人達がローンを背負って物件を買い、証券会社がそのローンを証券化した。そして高格付けをつけてバンバン売りまくったことでリスクが凄まじい勢いで膨らみ、遂に立ち行かなくなって崩壊した。
知識のないサラリーマン大家たちが高金利でくそ物件を買い進めれば、いずれ自己破産に追い込まれる事だろう。そして、自己破産すれば、銀行は融資の大部分を取り返せなくなる。すると、個人向け融資で稼いできた銀行は一気に不良債権を抱える事となる。
国は、そんな爆弾を市場にちりばめる事を看過してはならない。不動産投資は一定の金融資産を持ち、返済余力のある人間がやるべきものである。
フルローン・オーバーローンが引けて、自己資金が無くても借りられてしまう環境は異常と言わざるを得ない。国は直ちにこの環境の是正に動かねば、いつ爆発するかわからない爆弾がどんどん大きくなっていくことになるのである。
以上
関連リンク:サラリーマンを借金漬けにして食い物にしたスルガ銀行と不動産屋の罪とは
大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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