【マルチ講】中国でアムウェイのセミナーに参加した時の事

都内某所、マルチ講の勧誘

先日、都内某所にて食事をしていた。すると隣にスーツ姿の若者(30歳くらい)が2人座っており、口角泡を飛ばしながらなにやら会話していた。

よく聞いてみると、一方の男性が14年前まで日本の携帯電話が世界一だった、とか、youtubeが普及したのはわずか7年前、などと言った事を熱く語っていた。

喋り方がうざいな、と思いながらもジッと聞いていた。

すると、××さんはちゃんとメソッド実践してる・・・××サンもいよいよ最終ステージ・・・××さんの言う通りにやって俺はここまで来た・・・などとやたら語っている。通常、商談している場合、プロダクトなどの長所などを強調するものだが、この男性は誰かが凄い、そのやり方が凄い、という話を只管繰り返している。

しかも、色々熱く語っているのだが、その根拠となる部分が語られない為、全く頭に入ってこないので、胡散臭いというかウザい・・・としか感じられなかった。

そして、更に聞いていたところ、××さんは今60人だけど、先月5名退会・・・

という言葉を聞いた時、あーこれはマルチだ。と思った。もう一人の男性は勧誘されているっぽく、胡散臭い話にやたらうんうん頷き、そっすね!凄いっすね!なんていいながら、会社を辞めて専業で行こうかな・・・なんて話していた。

そして、勧誘している側は、俺は商談する時にカフェが多いけど、相手の信用得る為に会議室借りるなんて投資をしているし、お茶代も惜しみなく出してるし、交通費も注ぎ込んでる。だから今の俺があって・・・と語り続けていた。

私は商談する際、相手の靴、シャツの袖口、スーツの背中のヨレ(生地のクオリティがわかる)を見る癖があり、みた瞬間にこいつは金ないな、ちゃんとした客を相手にしてないな、とわかってしまうのだが、この男性は正に全てダメだった。

発言もショボく、身なり等もダメだったが、目の前の男性が騙されんとしているのが不憫で、よっぽど助けてあげようかと思ったが、ややこしい事に巻き込まれそうなのでやめておいた。

中国の公園での思い出

こんなやり取りを聞きながら、随分昔、中国でアムウェイの集会に連れていかれた事を懐かしく思い出した。アムウェイとは化粧品などを取り扱う会社で、世界最大のマルチ講である。といっても、マルチは実態を伴わない無限連鎖講だが、アムウェイの場合、商品の売買という実態があり、販促料という形態をとっている為、ぎりぎりマルチではないという整理で世界中に広がっている。

アムウェイ(Amway)のスキームを簡単に説明すると、会員が更に別の会員に商品を販売すると、その販売販促料が手に入るという仕組みである。

現在、アムウェイは売上の40%を中国であげており、巨大な市場となっている(中国での名称は安利中国)。

私が集会に誘われたのは、かれこれ10年ほど前の事である。

所要あって、知人と上海の公園を歩いていた。その時、若い女性の看板を持ったおばちゃんたち10名近くに囲まれた。おばちゃんたちは口々に、あなたは何歳?なんの仕事をしている?不動産は持っているの?この子どう?と聞かれた。

何を聞かれているのかわからなかったのだが、近くにいたおばさんが日本語を喋れて、中国では親が子供の代わりに婚活、つまり結婚相手を探し出すのだと教えてくれた。公園などで看板を持って相手を探し回り、一方で男性の父親がアプローチしてマッチングするらしい。

とりあえずその場は切り抜けたが、色々教えてくれたおばさんが、もっといろいろ教えてあげるからついてきなさい、というので、興味本位でついていってみた。

中国アムウェイの集会

とある上海市内の雑居ビルに連れていかれ、おばさんはこっちこっちと言っている。

別に殺されたりはしないだろう、なんて思いながらエレベーターで30階?くらいに行った。

エレベーターが昇るにつれて、凄まじい爆音が響いてくるのがわかる。そして、扉が開いた瞬間、まだ部屋にたどり着いてもいないのに、凄まじい熱気がエレベーターに吹き込んできた。

エレベーターを出ると右手に通路が繋がっており、T字路になっている。T字路の左右から出たり入ったりしている私服のおじさん、おばさんがおり、体を揺らすほどの爆音が響いてくる。

T字路を左に進むと部屋の入り口があった。人ごみをかき分けるようにして、部屋に入ると、ものすごく広いぶち抜きの会議室となっており、100mほど向こうにステージがあった。

爆音で知人の声は何も聞こえない状態で、周りにおじさんおばさんが溢れかえっており、イモ洗い状態だった。

そこにロバートキヨサキ(アントニオ猪木の顎が短い版)の中国人版みたいな人が現れた。そして、最高ですかーーーーー!!!っぽい事を叫ぶと、雑居ビルの床が抜けるんじゃないかと思うほどの歓声が部屋を埋め尽くした。天井が高くなく、部屋の容積は大きくないので、酸欠と歓声で思考回路がうまく働かない感じである。

そして、中国人版ロバートキヨサキが煽り立てるように何かを語り、再び最高ですか――――――――!!!みたいな掛け声をかけると、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!という歓声が上がり、もはや狂乱と言ってもいい状況になっていた。

皆目を輝かせ、アムウェイのパンフや商品を手に持ち感動と陶酔の中にあった。

さらに続くアムウェイの集会

そして中国人版ロバートキヨサキが、会場の中の1人の女性をステージに呼んだ。なにやらその女性がどれくらい頑張ったかを話しているっぽかった。そして、

××××!××一番!!非常感謝!!

というと、

ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!うううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

再び歓喜狂乱の嵐。それを聞いている間に、部屋の後ろから続々とおじさんおばさんが入ってくる。

もはや、ここに連れてきたあのおばさんはどこに行ったかすらわからない程、もみくちゃにされていた。

そして脱出

とても耐えられなくなってエレベーターに駆けつけて、エレベータから外に出たときは本当にほっとした。スピーカーの横で爆音を聞いた後のように、知人も私もお互いが話す声がよく聞こえなかった。

それ以上に、お互い話す気力もないほどで、しばらく無言で歩いた。

おわりに

そのころ、アムウェイは中国で急速に勢力を拡大しており、様々な国で培ったノウハウを実践していた。実際、中国人の知人の数名もアムウェイを売っていたが、実際に商品のヘビーユーザーでもあり、マルチで騙されているというよりも、商品が純粋に好きという感じの人も少なくなかった。

日本でもアムウェイは存在するが中国ほどの知名度や信頼感は確立されていない。というか、マルチまがいの仕組みの構築はやめてほしいし、隣で飯を食いながら勧誘されていた若者のような被害者が、増えない事を切に願う次第である。

以上

【関連リンク:投資詐欺】業者をボコボコにした時のはなし【ヘッジファンド】


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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