史上最高の冒険譚 ~是川銀蔵 相場師一代~
久しぶりにワクワクする一冊を読んだ。本屋の隅のほうに押し込められるように置いてあったが、是川銀蔵という名前に反応して読んでみた。
評価:★★★★★
いうなれば、この本は一人の男の冒険譚と言ってもいい。夢と野心に満ち溢れた男が、楽しい事や儲かる事を探して、この一瞬を全力で生きてきた物語をありのままにつづっている。
まず、いきなり青島に渡って10代で貨幣を溶かして金に換えるビジネスで名を挙げた・・・というストーリーから破天荒すぎて超わくわくする。
今の日本人なら、高校行って世界史でも勉強してる頃なのに、この爺さんは大連で軍人とかとやりあって、無一文から名を挙げているのである。凄すぎる。
そして、日本に戻ってきたら大阪で事業を立ち上げて成功。
更に大陸に渡り韓国に駐在していた小磯邦明元首相との知遇を得て、政治にも関わっていき、政治力を梃子にして商売を拡大する政商となっている。これでまだ50歳にもなってない。信じがたい。
もうここまでで、常人の人生ならばお腹いっぱいどころか破裂しているが、ここからさらに勝負の連続である。
晩年と昭和50年代には1976年に日本セメント、1979年に同和鉱業、1982年に不二家、1983年に丸善石油、平和不動産の株買い占め、と続く。
そして、妻にもう株はやらない、平穏な日々を送る、と宣言して静かな生活を送っていたものの、是川の目にとある日経新聞の記事が目に留まった。
1981年9月18日、鹿児島に高品位の金鉱脈
金属広域炭鉱団の広域調査の記事で、鉱区は住友鉱山の子会社が保有していた。吸い寄せられるようにその記事を読むうちに是川の胸が次第に高鳴ってきた。。。
中略
体中の血が沸き上がり、頭はカーっと燃え上がった。記事を読み進むうちに、久しぶりに震えるような感動が全身を襲ってきた。。。
後略
「住友金属鉱山、これは買いだ。この場を逃したらワシは一生後悔するかもしれん。生涯二度とない買い場だ!!」
体中が興奮で震えているのがわかる。とてもジッと座っていられるどころではない。私のこうした取り乱した様子を傍で見ていた女房の寿美と目が合うと、「もう株には一生手を出さん」きっぱりと誓ったことを思い出したが、グズグズしている時ではない。
ひと時を争うのだ。
「えらいことや、住友鉱山の工区に世界一の金鉱が発見されたんや。同和鉱業で儲けそこのうた分はこの住友鉱山で菅らず取り返せる。もう一生株はやらん。とお前に誓ったが、もう一度だけ頼む。やらせてくれ。」
こんなに心熱く日々をすごす80代がどこにいるだろうか?そして全身全霊で勝負を挑む姿は正に男であり、勝負師である。
仕事とはこういう気持ちでやるべきものと改めて思った。誰かにやらされるのではなく、朝イチで新聞読んで、それに胸が熱くなり、家族に頼み込んでも実現させたい事を実現させていく。
これが本当の仕事であり、プロの姿である。
個人投資家はリスクを背負いながら生きている人達だが、沢山の不安を抱えつつ、誰にも相談できない苦しみを抱えている。そんな人にこそ、自らが収集した情報を基に考え、信念をもって行動する男の姿を描いたこの一冊を読んで頂きたいと思う。
以上
大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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