食糧ビジネスの未来〜培養肉が切り開く世界〜

2018年1月20日資産運用, 日本の論点

培養肉と聞くと何か気味の悪いもののように思うかもしれないが、その感覚は10年後には古い感覚になるに違いない。

世界には牛、鳥、豚、といった家畜が何十億と飼われており、毎日数千万単位で殺されている。

これら家畜の一生とは、絶望的なほどに悲惨であり、現場にいけば多くの人が直視できないはずである。

私は中国の肉牛飼育施設に行ったことがあるが、生まれた子牛は直ちに母親から引き離され、狭い囲いの中で育てられる光景を見た。

その牛は、動き回って筋肉がつき過ぎないよう、狭い囲いの中でエサを投与されて育ち、初めて歩き回れるその日が、屠殺される日となる。

屠殺に感づく牛もおり、恐怖で屠殺場に向かう足が止まるものもいるが、ケージに入った瞬間、電気ショックなどで一撃で仕留められて、その牛の短い一生が終わる。

可愛そうとか可愛そうではない、というのは人間の上から目線に過ぎないが、それにしても生き物の自然な在り方とは全く異なると言って差し支えないだろう。

養鶏場などは効率重視でとにかく早く育て、大量かつ効率的に捌き、毛や血を綺麗に安価に処分するかの勝負であり、その現場は生命を扱う場所、というよりもただの工場といった感がある。

人間は生きるためにカロリーが欠かせず、食物連鎖の頂点にある存在として、他者を捕食せずには生きられないが、少なくともそのカロリーの取り方をコントロール出来るだけの知性は身につけつつある。

おそらく、2030年には培養肉を都市部に近い工場で量産する時代が来ることだろう。

なぜなら、自らと同じ種である哺乳類を殺すことに対し、人類は憐れみを感じずにはいられないからだ。

例えば、犬、猫や馬など、人類のそばにいる哺乳類はたくさんいる。これらを殺して食うのは、動物を食べるという意味では牛を食うのとなんら変わらないが、可愛そうだと思ったり、拒否感をもったりする。

それはただの文化的慣習に育てられた価値観に過ぎない。

牛や鳥、魚が殺される姿を目の前で見たことがあるが、それはそれは可愛そうな光景だった。

なんなら、目の前で人間が殺されるのと変わらないほどに悲惨である。

イメージして欲しい、殺された人間が冷凍されて倉庫に突っ込まれている姿を。

想像もしたくない光景だろうが、牛、鳥、魚、あらゆる動物は世界中で冷凍されて倉庫に突っ込まれているのが現状である。

今の世界はまだ、サスティナビリティの世界である。持続可能な開発のために、動植物を守る、という発想であって、動物が殺されて可愛そう、という所に至っていない。

しかし培養肉のテクノロジーが進化すれば、サステイナビリティは古くなる。

手始めに人類は哺乳類を囲い込んで殺戮する時代を終わらせようとすることだろう。培養肉のコストが下がるほどに、人々のマインドも変化していくことだろう。

この変化を主導するのは、人々のマインドではなく、利益を求める企業であろうと私は読んでいる。

なぜなら、企業にとってもわざわざブラジルで肉や鳥を育てて、殺して冷凍して、コンテナに詰め込んで、日本の倉庫に保管して・・・といった長いサプライチェーンをたどるより手間が減るからだ。

たとえば、長野県の山奥で牛肉を培養して、その場で衣づけして、唐揚げして、冷凍して出荷すれば、早いし地球の裏側とコンタクト取る必要もない。

複雑な物流を組む必要もなければ、麦や大豆の相場を気にしつつ、肉の相場の上下に一喜一憂する必要もない。

サプライチェーンに関わる人間が全員いらなくなるコストメリットは、肉養殖のテクノロジーに払うコストをすぐに凌駕することだろう。

気づけば、養殖肉を食べていないアフリカなどの後進国の人達を指して、「牛や豚を育てて食べている野蛮な人達」なんてことを言ったりする時代は、そう遠くない未来の話であろう・・・。

以上


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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