N国やれいわ新選組の躍進の3つの理由と民主主義の2つのあるべき姿
今回の参議院選挙でNHKから日本国民を守る会(略してN国)とれいわ新選組が夫々国民政党としての要件を満たして議席を確保するというサプライズがあった。
両政党共にほとんど実績はなく、物珍しさや新しさに注目が集まった。しかも、実績がないにも関わらず多額の寄付が集まり選挙戦を戦いやすくなったのも、政党として議席を得られた要因の一つであろう。
彼らが議席を得たのは、珍しいから、目立つから、というのは確かにそうなのだが、それ以上に根本的なポイントがある。それを3点に絞って解説したい。
勝利ポイント1)主張がシンプルだった
NHKをぶっ壊す、と連呼していたN国は、NHKのスクランブル放送実現のただ1点を政策とした。また、れいわ新選組は弱者救済を掲げた。いずれも、訴えている内容がシンプルでわかりやすい。
これまでの選挙では、候補者が長々と演説し、名前を連呼し、何が何やらわからないままに投票する、というのが当たり前になっていた。有権者は政策なんてよくわからないし、その政治家がすぐに、直接的に具現化するわけでもないし、それなりに幸せな日々を送っているし、選挙めんどくせ。となって投票しないというループになっている。
そんな中で、ワンイシューや弱者救済といった政策はわかりやすく、何も考えずに、何も理解せずとも投票できる気軽さがある。これが勝利ポイント1である。
勝利ポイント2)弱いものの見方っぽい
N国は多くの国民が負っている納税の義務に近いNHKからの徴収拒否を政策に掲げた。誰もが少なからず不満を感じるであろう点を政策にすれば負けにくい。彼らに投票した人たちや、ワンイシューで勝ったのは立派、と思っている人達は、スクランブル放送が実現された後の世界なんて想像していない。
むしろ想像する力が欠如しているし、想像しようとも思わない甘さがあるゆえに、ワンイシューをがなり立てる人間に騙される。
また、れいわ新選組は弱者救済を掲げた。冷静に演説や彼が示す根拠を見れば、実現不可能な政策であることはすぐにわかるが、それを判断できる有権者は100人のうち5人もいないだろう。
弱者救済はたやすい。金を配るのは誰にでも出来る。金を確保することは殆どの人ができない。誰にでも出来ることをそれっぽく訴えれば、金を確保することの難しさを理解しない人々、気づこうともしない人々をだますのはたやすい。
民主党が政権をとったとき、ありとあらゆる甘言を弄して、政権をとった末に何が起こったか、財源を確保できず、しがらみを解き放てず、ただただ時間を浪費して国力を損なった。それなりに人材がいる民主党ですらあのざまなのに、れいわ新選組に何ができるのか。
また、小池百合子都知事は選挙の際に、東京から花粉症をなくすとか、できもしない公約を山ほど掲げたが、結局いずれも実現しなかった。だが、彼女は都知事をやっている。
公約なんて関係ない、人をだましても関係ない。弱いものの見方っぽく振舞い、それっぽい言動をすれば、愚か者たちは投票する。それが彼らが勝利した理由である。
勝利ポイント3)露出を増やす
インターネットが発達し、SNSなど本人が投げ続けずとも自動的に拡散していくシステムが完成された現代においては、炎上させるのが一番コスパが良い。両政党とも只管炎上させながら露出をあげてきた。
例えば、山本太郎は一人牛歩戦術や、天皇陛下に手紙を渡すなど、政策云々の前に人として、国民の代表としてあるまじき行為を重ねてきた。自分さえよければいい、目立てばいい、そんな姿をさらしながら露出をあげていった。
N国は言わずもがなである。このような人々は露出を増やすことで利益を得られることを知っている。それは辻希美の炎上商法と何ら変わらない。ムカついている人達の存在でマネタイズし、票を集める。クズのような手法だが、現代ではこれが有効である。
まとめ
上述の通り、主張がシンプル、弱いものの見方っぽい、露出を増やす、の三点が両党を勝利させた理由である。この3点の手法を使ったとして、日本がよくなるかというとはっきり言ってならない。できもしない政策をもとに、もしくは具現化したとしても財源確保や効果が乏しい政策は、日本をだめにする。
にも拘らずこのような政党が誕生してしまうのが現在の民主主義である。ではどうすれば、この民主主義をよりよくして行けるのだろうか。
民主主義をよくする手法1)結果責任を問う
これらの政党が誕生してある事ないこと、できることできない事を吹いて回れるのはなぜか。実にシンプルで、吹いて回ったとしても、自分に何も害がないからである。最悪落選するだけで、それ以上に被害がない。
例えば、企業のオーナー社長は、会社が損失を出して倒産すると、自身もすべての財産を失う。故に必死に業容を伸ばそうとする。実に理にかなったシステムだろう。借金にまみれて、下手をすると自殺せねばならない。自分だけでなく一家郎党死ぬ、というケースも出てくる。
しかし、民主主義の政治においては、その責任を問われない。実に不思議である。例えば、れいわ新選組が政策を実現するために財源を確保できなかった場合、彼自信及び彼の親戚もろとも死刑となるならどうだろうか。彼は逃げ回るだろう。
天皇陛下に手紙を渡したとき、現代の田中正造などという報道がなされたが、150%性質が違う。田中正造の時代、天皇に対する不敬罪は死刑だった。また、一族郎党も村八分にされるなど、それは過酷な制裁が待っていた。にも関わらず訴えたのは、まさに命を懸けた行動である。
一方、山本太郎のそれは、単なる売名に過ぎない。そして、彼が掲げる政策はいずれも弱者救済の甘い言葉だが、どれも具現化は難しく、そして具現化できないときに死をもって、また大切な人も含めて死や村八分になる覚悟はみじんもない。
このように結果責任を負わない仕組みはまずもって機能しない。甘言を弄する人間がはびこるだけである。
民主主義をよくする手法2)政治家の資質や人気を問わない
これは結果責任を問うともリンクする。民主主義においては、政治家は実務家と同時に名望家の側面を持つ。そして、名望家としてふさわしい行動をとりつつ、人気をあげることが求められる。
しかし、あなたの30年後の年金を確保するのに、政策を決める人間がイケメンである必要があるだろうか?弱者救済の演説が上手で、聞いている時間だけ幸せにしてくれる人が政治家であるべきだろうか。
間違いなく違う。30年後の年金を確保したいなら、30年後の年金を確保できる財源を生み出す政治家が必要なだけである。この意味でワンイシューは正しい。今の民主主義は、あらゆるテーマや要素がごちゃ混ぜになって、人に投票という意味不明な行為に帰結するため、求める結果と投票がリンクしていない。
然し、民衆の100人に95人は求める結果に行きつくための手段を知らないし、学んでもその答えを出すことができないので、自分が投票して判断するのは不可能と言い切れる。仮に、その判断ができる人がほとんどだとすれば、なぜ世の中の多くの人は貧乏なのだろうか?結果にいきつける力があれば貧乏であろうはずもない、誰かに搾取される理由もない。つまり、殆どの人は結果を出すすべを知らないし、考える力もない。
とすれば、力がある人間が、個別の政策を審査して、それぞれに投票していくのが理想の民主主義であるといえよう。
最後のまとめ
以上、2つの政党の3つの躍進の理由と2つの民主主義のあるべき姿を述べてきた。今は世界的に人に投票する、という時代だが、ビッグデータとAIによる解析が発展する中で、今後間違いなく個別の政策を民衆が決められる時代が来る。
然し、民衆は個別の政策を判断する力はなく、それはどのような時代になっても変わらない。故に民衆は、その判断力を持つ人を選ぶ時代が必ず来る。
つまり、100人の人がいれば、彼らはビッグデータやAIのおすすめにより、5人の力がある人々を選ぶことになる。それらの人達は、個別の政策に精通しており、政策決定に深くかかわっていく。彼らは品行方正ではない。立小便をしたり、脱税したりするかもしれない。
然し、政策の正しさを見通す力は誰よりもある。
そんな時代が間違いなく来る。
かつてチャーチルは言った。民主主義は最悪な政治と言える。これまでに試みられてきたすべての政治体制を除けば別だが。
この言葉は正しい。そして、民主主義は進化する時代にきている。直接民主制が理想の体制に近いものの、有権者に賢さを求めるという致命的な欠陥がある。故に、賢い人間が政策を選ぶ。賢くない人間は、ビッグデータとAIの力で賢い人間を選ぶ。
これが民主主義の最終形態であろう、と思う次第である。
以上
大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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