年収1000万円は高いのか?日本で貰えばこそ高年収という事実

2018年8月7日資産運用, 日本の論点

よく、ビジネスパーソンの間で年収1000万円届いているかどうかが、高年収の境目と言われることがある。実際、ビズリーチの広告などを見ていると、1000万円超の求人募集、といった表現が出てくることがある。

では、年収1000万円は低いのだろうか、それとも、高いのか?

名目と実質年収の違い

そもそも単に高い低いと感覚的な話をしても意味がないので、名目と実質の違いを理解する必要がある。

名目GDPと実質GDPというのを聞いた事があると思うが、要は今回の問いもこの2つの違いと言える。つまり、単純に為替換算して給与を比較したものが名目であり、物価を勘案して給与を比較したものが実質と言える。

他国と日本の実質給与の違い

実質ベースで考えてみたい。例えばアメリカではビッグマックが600円程度する一方、日本では380円である。つまり、1.5倍くらい違う事になる。かなり荒っぽいが、仮にこれが他の消費財にも適用されるとしたら、アメリカで円貨ベースで1500万円もらっても、日本で1000万円もらっているくらいの感覚しかない。

スイスでは750円と日本の倍なので、円貨で2000万円貰ってようやく1000万円の感覚である。

給与以外に勘案すべき要素(税金)

では、実質ベースで同額貰えば経済的豊かさの実感が変わらないかというとそうではない。各国によって実行税率(所得税・消費税)と社会保障税制が異なる為である。税制は各国によって相当複雑なので割愛するが、日本は西欧先進国やアメリカと比較するとかなりマイルドで、年収1000万円では所得の半分程度しかとられないイメージである。

つまり、実質給与が同じでも、年収1000万円の手取りは先進国の中では相対的に手取りが高くなる傾向にあると言えるだろう。

給与以外に勘案すべき観点(ものの豊富さ)

次に、物の豊富さ、とは身の回りにある消費財の種類を指す。西欧諸国に行ってみると分かるが、スーパーに行くと膨大な種類の商品が並んでいる。これは日本と比較してもそん色ないレベルにある。

一方、スーパーに代表される小売、外食、そのもののバラエティで比較すると、日本は圧倒的な多様性に富んでいる。社会的な規制が多い上、地理的な制約がある(山川谷海に分断されており狭い国内で地域ごとに文化が多様化している)為、街中を歩くとチョイスの種類の多さは比較にならない。

例えば、100円ショップですら、ダイソー、セリア、キャン★ドゥ、ワッッ、オンリーワン・・・、立ち食いソバも、小諸そば、富士そば、ゆで太郎、笠置そば、吉そば、越後そば・・・と数えきれない。仮にヨーロッパにあれば、これらはもはや2-3社に絞り込まれているだろう。

特に上述のとおり、狭い国土に山川谷海があり、気候も変化に富んでいる事から取れる食材が豊富であり、地域ごとに文化が大きく異なる。よって、食文化の多様さは世界一と断言できる。

これに加えて、様々な規制がある上、中間流通業が関与してきた事で、その豊富さが維持されつつも全国の食文化が交流して、新たな食文化が花開き続けてきた歴史があるのである。

結論、年収1000万円は低いのか、高いのか

上述を踏まえると、仮に実質給与や税金等が全く同じであったとしても、少なくとも消費生活の面で日本ではダントツに豊かに暮らせる事は疑いようがないだろう。特に、日本文化になじんだ日本人は、その豊かさを知らぬ間に享受し続けている為、実感がわきづらいが、海外に出て暮らすと、日々提供されている各種サービスや商品が如何に世界的に稀でレベルが高いものか思い知らされる。

結論として、日本で貰う年収1000万円は世界的に見ても高くない。然し、実質的な生活インフラの整い方が半端じゃないので、コスパがよく使い勝手のある1000万円である。更に、より生活コストが低い地方で1000万円を貰えば、圧倒的な生活レベルを実現できる。

ただ、1000万円もらっている人が、西欧に旅行に行ったり、その給与で暮らそうと思うと、決して豊かな暮らしは出来ない上、日本で自然と得ていた生活インフラが無くなるので、実質的な給与が下がる感覚があり、大変な苦痛を覚えるのは間違いないのである。

以上

追伸

生活にクリティカルな影響を与えるのは食なので特にそれを取り上げたが、四季そのものの喜び、という点も日本での生活を素晴らしくさせる点も見逃せない。寒さから解放される春の喜び、強い日差しが眩しくてうれしい夏、和らぐ暑さと山の彩を感じる秋、部屋の暖かさが恋しい冬、と全てが日本という土地でしか得られない掛け替えのないものであって、それこそが日本で生きるメリットなのである。


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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