OBに嫌われた話
部活の卒業パーティーがあった。
卒業式で、自分が話すべき人たちと、いかに自分が××社に入りたいか話をした。
とっても大切で人生に関わる話を。しかし、人間中立というのは一番難しい。片方に寄れば、片方はそれを見て離れていく。
そのOBと話しているとき、競合で働く別のOBから鋭い視線が向けられていた事に気付かないまま、俺は話し続けた。
各方面で、それぞれが思い思いの話をしていた。
それぞれの思いをぶつけていた。
そんな中、俺もまた同じだった。と同時に、周囲を見渡して皆がどのような行動をとっているかもつぶさに見ていた。
先輩たちの中で選ばれる人はごく僅か、という状況を知りながら、しかも部活で大した役職についていない自分に光は当たりづらい、それを逆転しなければいけないのは、ぬかるみの中を必死に陸地のほうへ向かって歩いているに等しかった。
ぬかるみを歩きながらも、話したいOBと話せて光明を見出しながら宴は終わった。
そして次なる会へ。ここで大きな間違いを犯した。
招かれざる客だと知らずに、踏み入れた場所はさらなるぬかるみだった。どうやら、その飲み会は、特定の部員を囲い込む為の飲みで、すでに囲い込む対象も決まっていたようだった。
踏み入れると共に、幾多の目がこちらを覗き、排斥しようとした。
さりとて一度踏み入れた場所から離れるわけにもいかず、その場でとどまった。まさに、針の筵とはこのことだった。
歯ぎしりしながら、愛想笑いを重ね時が経つのをじっと待った。
方々から、なぜいるのかと声が聞こえる。されど、引き返すこともかなわない。それが、完全に知らない人たちの間であれば後の笑い話として済ませることもできただろう。
しかし、今の時期人生をかけて一言一言を発している。態度に表わしている。
針の筵で耐えるうちに、挨拶をしろと声がかかった。立ち上がった。異論が出て座った。そして再び話を振られ立ち上がった。
なぜ?という声がそこかしこから聞こえるなか、自己紹介を済ませ現況を話した。
就職活動に励むというと、どこに行きたいとの言葉。そこで・・・××と答えると、目の前のOBが狼よりも恐ろしい表情で「先ほどは競合の××の○○にひっついていたのを見たぞ!」と叫んだ。
もはや、どうにもしようがない。がんばりますと言って座った。
その日、最後に挨拶をした××の方は、返事もくれなかった。ぬかるみは深い沼となって、足を取っていく。積極的に動いた今日も、歩けば歩くほど、深く沈んでいくのを感じた。
やり切れぬ思いで帰宅し、無念の思いが胸をついた。どうにもできない失態が意識を取り巻いた。
もう、何も考えたくない。こんな思いは、明日目覚めれば冷めているだろう。次なるステップを踏み出すために新しい事を考えよう。たくさん働きかけてきたが、もはや結果を出すしかない。
以上
大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」
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