就職活動ランキング〜新卒一括採用で生まれる養老の滝の人々〜

2018年1月20日処世術

日本では大卒・大学院卒の学生が卒業の1年前くらいに一斉に就職活動する。

日本では一度入社したら、給料が徐々に上がり、50歳過ぎた頃から企業年金や退職金がもらえるというインセンティブもついており、容易に辞めづらい制度が組み上げれあれている。

この仕組みを終身雇用制度と呼び、年功序列、新卒一括採用はこの制度と非常に相性のいい仕組みとなっている。

新卒一括採用で入社すると、現在の日本の労働法規において、非常に辞めさせられにくいシステムとなっている。

学生達もそれがよくわかっている為、仕事・給料・福利厚生・年金や退職金・知名度・ブランド力・採用人数などを纏めて、就職偏差値ランキングなるものを編み出した。

以下はとある掲示板に掲載された文系就職偏差値ランキングの一例である。

▼2018/19卒用 文系就職偏差値ランキング
[69] 国際協力銀行 日本銀行 野村證券(GM) フジテレビ 三井不動産 三菱地所 YCP
[68] 経営共創基盤 集英社 東京海上(SPEC) ドリームインキュベータ 日本政策投資銀行 日本テレビ 日本取引所 野村證券(IB) 三菱総研
[67] 講談社 小学館 テレビ朝日 電通 日本生命(AC) 野村AM 三菱商事 みずほ証券(IB) みずほFG(GCF) SMBC日興証券あ(セルトレ)
[66] 第一生命(FE) 大和証券(GM) 日本郵船 博報堂 みずほFG(GM/AM) 三井物産 三菱東京UFJ(戦財/FT) 三菱UFJモルガンスタンレー(IB) SMBC日興証券(IB) TBS
[65] アセットマネジメントone 伊藤忠商事 コーポレートディレクション 商船三井 住友商事 大和証券(GIB) 大和投資信託委託 テレビ東京 トヨタ 日本財団 野村総研(コンサル) 三菱東京UFJ(GCIB) 三菱UFG国際投信 GCAサヴィアン JICA JR東海 NHK

━━━ Sランク ━━━

[64] 朝日 共同通信 国際石油帝石 準キー 新日鐵住金 大和住銀投信投資顧問 日経 ニッセイAM 日本経営システム 日本証券金融 任天堂 丸紅 三井住友AM 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 読売 JXエネ
[63] 旭硝子 味の素 出光シェル サントリー 証券保管振替機構 信越化学 全銀協 損保協 中電 東急不動産 東ガス ドコモ 日証協 日本相互証券 農林中金 野村総合研究所(ITソリューション) ホンダ 三井住友トラストAM 三菱重工 JFEスチール NTTデータ経営研究所
[62] アビームコンサルティング 小田急 キリン 京王 シグマクシス 住友不動産 損害保険料率算出機構 東急 東京海上日動 東京建物 東電 日産 日本総合研究所(コンサルタント) 阪急 三菱化学 三菱UFJ信託 日本総研(コンサル) みずほ総研(コンサル) JR東 JRA
[61] アサヒ 上田八木短資 関電 川崎汽船 時事 村田製作所 住友化学 セントラル短資 大ガス 大和総研(リサーチ) 中日 東京短資 東燃 日清製粉 日本生命 日立コンサルティング 富士フィルム 毎日 みずほ情報総研(リサーチ) JR西
[60] 花王 サッポロ 資生堂 首都高速 双日 デンソー トーア再保険 豊田通商 日揮 日本郵便 日立 三菱電機 三菱東京UFJ(OP) JT KDDI R&I

━━━ Aランク ━━━

[59] 産経 地電 電源開発 NEXCO中 NTTデータ 東レ 富士セロ 川崎重工 コマツ 住友電工 森トラスト キーエンス キヤノン ANA 三井住友信託 武田薬品 三菱マテリアル ブリジストン
[58] SMBC JFC MS海上 NKSJ 第一生命 3Mジャパン 日東電工 森ビル NEXCO東西 三菱倉庫 メタルワン 神戸製鋼 伊藤忠丸紅鉄鋼 旭化成 三井化学 IHI ADK ソニー
[57]みずほ銀行(OP) あいおいニッセイ同和 明治安田生命 住友生命 商工中金 郵貯銀行 NTT東西 野村不動産 私鉄下位 阪神高速 JX金属 JSR 豊田織機 リコー NTTコム 富士通(SE除く) クラレ 帝人 富士通総研 日本能率協会コンサル
[56] JR九州 昭和電工 古河電工 島津製作 ニコン 鹿島 住友金属鉱山 宇部興産 住友倉庫 ソフトバンク かんぽ生命 日本総研(IT)
[55]りそな銀行 日立化成 日本製紙 日本板硝子 大陽日酸 積水化学 バンナム 三菱ガス 化学 YKK オムロン アドバンテスト コニカミノルタ 明治製菓 大林組 清水建設 竹中工務店 三井倉庫 大和総研(IT) みずほ情報総研(IT)

━━━ Bランク ━━━

おなじ会社でも上下が分かれているケースがある。

例えば野村證券(IB)と書いてあるのはInvestment Banking、つまり投資銀行部門の事であり、顧客から集めたお金を元手に積極的に投資運用して大きなリターンを稼ぎ出す部門のことである。

つまり、同じ会社でも給与や待遇、出世スピードなどがことなる為、同じ会社でも違うランキングとなっている。

この表を見ると、日本企業の中では給与が高い企業が集結していることがわかる。また、研修など、人材育成においても秀でていると言われる会社が多い為、新卒で入社するというのは、社会人生活をスタートさせる上で有効なカードの使い方といえよう。

問題は、入社した後の生活にある。

日本の大企業は有能な人材を腐らせる為の仕掛けが随所に施してある。特にランキングが上の企業にはそういう仕掛けがより充実しているケースがある。

あたかも、不老不死の泉が湧く、養老の滝の如く、甘い水がそこかしこに湧き出ており、その水を飲めば不思議と力が湧いて一生会社にぶら下がろうという気持ちにさせてしまう。

実際、上位ランキングの企業には9時17時で働いて、給料が1000万円を超えている事務社員や総合職が溢れている。

もはや辞めさせられないことがわかっており、かといってポジションが上がることもないことが確定している人達は、絶対に力を出し切って仕事をしない。

あーこっちのお湯はあったかーい。

そっちもあったかいかなー。

よーし疲れた、帰ろう。

といって17時に帰っていく。

腐りきっているが、これが終身雇用、年功序列、新卒一括採用が生み出した社員達の最終形態である(この最終形態を「養老の滝の人々」と名付ける)。

仮に、町工場で夜遅くまで働いて年収400万円程度のひとやブラック企業と言われる会社でパワーハラスメントに苦しみながら、年収600万円を得ているような人達からすれば、憤りを感じるかもしれないが、これが日本なのである。

終身雇用・新卒一括採用・年功序列・・・こういった仕組みは、日本の成長力を鈍らせ、機会が平等ではない不公平な社会を作ることになる為、変えていかねばならないと思っている。

一部の会社では、年功序列や終身雇用が崩れつつあり、少しずつ「養老の滝の人々」を生み出さない社会になりつつある。

しかし、まだ厳然と残っているのが、新卒一括採用という悪しき習慣である。

新卒一括採用では、大学名などで一斉に足切りしたりするが、はっきり言って大学の偏差値は仕事の出来不出来と関係がない。

実際、わたしは沢山の大企業・中小企業の人達と働いてきた経験を元に断言できるが、仕事が出来る人が良い大学卒業だったなんてことはなかった。

仕事ができるかどうかは、仕事に対する責任感、そこから生じる仕事完徹への情熱、気迫、などが決定的な要因になる。

そして、その仕事を完徹する上で、様々なスキルや経験が必要となる場合があるが、強い責任感と情熱を持っている社員は、それらを短期間で必死に身につけようとする。

身につける際に、頭がよければ理解度が早い、という意味で東大卒業の社員が競争に強い可能性はあるが、仕事は暗記するだけの勝負ではないことが殆どである。

何か起こればすぐにお客さんの所に飛んでいき、色々な会合に首をだしては経験を積む・人脈を作る、といった多動力も仕事の出来不出来に大きな影響を与える。

よって、学校の偏差値は関係がないのである。

ただし、仮に大学が社会人になってから活きるスキルを身につける場所として機能するならば、大学名で採用可否を決める意味はあると思う。

例えば、以下のようなスキルは社会人に汎用的に有効なスキルだろう。

①英語などの外国語、
②簿記などの経理スキル、
③エクセル・PPTなどデジタル系のスキル、
④プレゼンテーションスキル、
⑤生物学や物理学などの基礎知識
⑥株・債券・マクロ・ミクロの知識

こういったスキルを遊びではなく、実戦で役立つレベルまで磨いておけば、社会人でもすぐに役に立つ。

上記に掲げた項目は全部大学でやるよ!と思うかもしれない。

わたしが大学で学べば社会人でも有効と思っているレベルは、例えば英語で電話を取り次ぐレベルではない。

ガチンコの交渉をしたり、外国人に指示を出して・指示完了までフォローする、それくらいのレベルのスキルである。

また、エクセルであれば複数に分散した数字を一枚のシートにピポットテーブルで纏め、それを打ち合わせの際に見やすい形にすぐ加工できるようなスキルである。

いやいや、それは社会人になってから・・・というのが今の大学や大学院の設計だが、それではダメである。

何故なら、新卒一括採用では、入ったらのんびり学んでしまい、のらりくらりやっている間に、甘い水が湧き出る滝を見つけてしまうからである。

しかし、大学で学ぶばかりでは、社会人で求められる仕事がイメージしづらいのも事実である。

さらに、大学は実戦的なスキル習得だけでなく、アカデミックな学びから、生きることそのもの、人間そのものをまなぶ場所でもある。

よって、大学生は社会人になって一度ガチンコで働いてから、もう一度大学に戻る、というのをお勧めしたい。もしくは大学在学中に、ガチンコで働ける環境を見つけて、働きながら学んで欲しい。

そうしなければ、大学ではのんびり遊んで、知らぬ間に新卒一括採用の時期が来て、たまたま入った大企業で、養老の滝の人々、になるのがオチである。

気をつけて欲しいのは、ワタミや笑笑でアルバイトして、貴重な大学生活の時間を切り売りすることが重要ではないという点である。

大切なのは、働く経験を通じて、自分が仕事人として働いていく上で、必要なスキルは何かを把握し、それを短期間で全力で習得する姿勢を身につけることが必要という事である。

大学生の行動を紐解くと、周りがやってるので自分もやってみようと思った・・・という主体性のない行動がとても多い。

そして、バイトやインターンも同じようなテンションでやろうとする学生が多い。

だが、この周りに流される、自分自信の考えのない姿勢の人達こそが、新卒一括採用でも失敗する人達である。

そして、たまたまその姿勢で大企業に入ったとしても、養老の滝の人達になる予備軍なのである。

以上


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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