破戒〜部落民への差別〜

2018年1月20日日本の論点

以下は私が10年ほど前に書いた文章である。

久しぶりにテレビ番組に心を動かされたため書き残す。

とある日、NHKで非常に驚くべき番組をやっていた。その時歴史は動いたで、エタ、ヒニン、そして全国水平社の話を取り上げていた。

NHKなど、放送各社がこの問題に関して取り上げるのは非常に驚き。実際、この問題は腫れ物に触るように報道各局は扱っており、関与しない方向で各社とも動いている。にもかかわらず、NHKが先導を切って取り上げた事に、称賛の声を送りたい。

部落問題解決には二つの側面がある。一つ目は、この問題を皆が話さない事によって風化させ、タブー視する事で誰もが知らない問題とする事が一点。二つ目に、積極的に皆で話し合って、子どもたちにも差別の問題を認識する事で、問題を積極的に解決していく方法。

これまでは、風化させる方法が多くとられていたように思う。

だが、いくら風化させようとしても根強く残る差別の問題。自分の意見としては積極的にこの問題を皆で話し合い、差別が愚かなものであること、差別する人間の心が憎むべきものであるという事を幼い子達にも伝えていく事が必要であると思う。

実際、差別を受けている人たちの苦難は計り知れない。

根強い、本当に根強い差別に苦しみ、結婚できず、出自を明かせず、自分の人生で常に生まれを意識しながら、自分の生まれを責めながら生きねばならない。これほど辛い事があるだろうか。

自分のアイデンティティの源泉たる出自を隠さねばならない、自分から否定せねばならないという事は、悲劇以外の何物でもない。

為政者たちが庶民を統治するために作りだしたこの制度は、未だに消えず人々の心の奥底に残っている。

ちなみに知らない人には是非知ってもらいたいと思う。

部落問題とは、穢多、非人と呼ばれる身分が江戸時代に作られた事が起源であると覚え聞く。もともと、臭いの強い動物の皮をなめす仕事や、動物を殺す仕事をしていた人たちを、差別すべき種類の人間と幕府が決め付けた事が原因だった。

人間が持つ、自分が少なくとも誰かよりは優れている・・と思いたい心を利用した徳川幕府は、農民より下の身分としてエタ、ヒニンを作り上げた。

彼らは一部の地域に住まざるを得ず、彼らの住んでいる地域が部落と呼ばれるようになった。。。

その末裔が、現在でも差別を受けているといわれる部落民である。

この差別の問題はとても難しい。

なぜならば、いくら差別が良くないことだとは思っても、自分が差別に巻き込まれる事を皆が恐れるが故に、部落民を遠ざけるからだ。どういうことか分かりやすく言えば、いじめの問題と同じ。

誰かがいじめられている。そいつを助ければ自分も同じくいじめられるかも知れない。その恐怖感が、見て見ぬふりをさせてしまう。みなが見て見ぬふりをする事で、差別の問題は永遠に残ってしまう。

この問題は大人のいじめに他ならない。未だにこの問題は、深い根を社会におろしている。愚かな差別など無くなればいいと思いながらも、自分では恐ろしくて行動できないだろう。

島崎藤村の破戒を読んだ。この破戒とは、ある青年が、父親と約束した部落出身である自分の出自を永遠に明かさないという、父との約束を破り新しい社会に出ていく話である。こんなに感動する話があるのかと驚いた。

同時に、ここまで深い差別があったことにも驚いた。塾講師をしていた頃、子どもから部落問題について質問された事がある。その時は、皆にしっかりと考えなさいと言った。それだけでは足りなかったと今は思う。

子供達に考える上でのツールとしての本や、映像、その他情報源を提供して教えるべきだった。人間はいつでも集団ヒステリーに陥る可能性がある。だからこそ、一人一人がしっかりとした考えを持つ必要がある。

一人でも多くの人を感化し、深い考えを共有するためにも、まずは自分が深く考えねばならないだろう。それがいつかこの問題を解決に導くだろう。

NHKは素晴らしい番組を作った。これぞNHKが国営放送として放映すべき番組だと思う。社会を幸せにするために、多くの人に番組を通じて問いかけるスタイルが、国営放送の責務だと思う。

以上


この記事を書いた人
りーぶら
りーぶら30代、都内在住、男性。

大企業に勤務するサラリーマンで、M&Aを手がけたり、世界を飛び回ったりしている。ぬるま湯に浸かって、飼い慣らされているサラリーマンが大嫌い。会社と契約関係にあるプロとしての自覚を持ち、日々ハイパフォーマンスの極みを目指している。歴史を学ぶことは未来を知ること、を掲げてしばしば世界を旅している。最近は独立して生きる力を身に付けるべく、資産運用に精を出している。好きな言葉 「人生の本舞台は常に将来に在り」

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